ケネディ就任演説と野依氏そして秋山好古氏
2009年11月29日
宇佐美 保
恐ろしい不況状態下の日本に於いて、鳩山政権、又、マスコミ、更には、日本人の誰一人として、「J.Fケネディ就任演説」を思い起こされないのが不思議でなりません。
どなたもご存知の次の一節です。
“あなたのために何ができるかを国に頼るより、あなた(達)が国のために何を行うことができるか自らに問うて欲しい。” “ ask not what your country can do for you - ask what you can do for your country.” |
更に、オバマ氏の大統領選勝利演説でも、
“Yes we can.(そう、私たちは出来るのです)” |
であって、
“Yes I can.(そう、私(大統領、政権)は出来るのです)”ではなかったのです。 |
国が、そして、国民が苦境に陥っている状態では、私達誰しもが、ケネディ就任演説の一節を思い浮かべ、この逆境に対処すべきであると存じます。
しかし、
鳩山政権は、このケネディ就任演説の一節を、何故、私達国民に訴えかけないのでしょうか? |
一昨夜(11月25日)の「報道ステーション」でも、司会の古舘氏は、菅副総理に“税金を安くして欲しい”とか“年末に日比谷公園でのテント村が発生しないよう(雇用)対策を”とかと要求だけをしていました。
(高給取りの古舘氏が、仲間を募って“進んで高額消費を行う”とか、“救済の為の募金をする”との発言も、訴えかけもありませんでした。)
それに対して、
菅副総理も“既に色々と対策は打っています”と言うだけで、 “あなた(達)が国のために何を行うことができるか自らに問うて欲しい”との訴えが皆無でした。 |
特に、残念だった(と申しますより、呆れたのは)、ノーベル賞受賞者をはじめとする日本の頭脳集団たちが「行政刷新会議の科学技術予算への厳しい判定について」声を揃えて反対の狼煙を上げた点です。
彼等に頭脳があるなら、国も国民も窮地に陥っている状態では、知恵を絞って「次善の策」を彼等から提出すべきだったと存じます。
先の拙文《野依さん見識を欠いているのはどちらですか?》に於いて、ノーベル化学賞受賞者の野依良治氏が同じノーベル賞受賞者のお仲間を引き連れて、「事実上凍結の判定を受けた理化学研究所の次世代スーパーコンピューター開発にも触れ「科学技術の頭脳に当たる部分。とどまれば瞬く間に各国に追い抜かれ、影響は計り知れない。仕分け人は将来の歴史法廷に立つ覚悟があるのかと問いたい」と声を荒らげた。」件などに関して野依氏批判を展開しました。
数人の友人知人たちに、“野依さんが、理化学研究所の理事長であること知っている?”と質問しましたら、 そして、ある知人は |
功成り名遂げたノーベル賞受賞者の方々が、次世代の研究者の育成をご心配されるなら、名誉職に腰を落ち着かすことなく、若者の育成発掘に力を注がれてはいかがでしょうか?
今朝のNHKテレビは、
秋山好古氏(注)が、元帥位へ推薦を振り切って、 故郷の友人から、“校長が不在となったので名前だけでも貸してくれ”と請われるや、 単身、松山に赴き北予中学校の校長就任して、亡くなる数ヶ月前まで若者の教育に身を捧げた |
との逸話を紹介していました。
(注:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の記述;「日露戦争において騎兵第1旅団長として出征し、第二軍に属して、沙河会戦、黒溝台会戦、奉天会戦などで騎兵戦術を駆使してロシア軍と戦う。」)
更に、同じノーベル賞受賞者でも、白川英樹氏に関して、国立博物館のホームページを訪ねますと、次のような記述を目にします。
白川博士はポリアセチレンの電気的な性質にも着目し、測定してみました。フィルムは外見こそピカピカと光沢を放つ金属のようでしたが、金属と同じように電気を通すことはありませんでした。白川博士はポリアセチレンの合成方法を発表しましたが、当時はそれほど話題になりませんでした。研究はこのまま埋もれていくかにみえました。 しかし、転機が訪れます。それはアラン・マクダイアミッド博士との出会いでした。1975年、東京工業大学に講演に訪れていたマクダイアミッド博士は、金属のように光沢のあるプラスチックを研究している人がいるという話を聞き、ぜひ見たいとということになりました。マクダイアミッド博士の元へ白川博士が持ってきた輝くプラスチックのフィルムを見て、マクダイアミッド博士は飛び上がるほど驚いたといいます。これが一緒にノーベル賞を受賞することになるマクダイアミッド博士との出会いとなりました。 |
更に、「NewsWebJapan」の白川氏へのインタビュー記事には、次のようにも書かれています。
白川氏の受賞は1977年の『プラスチックは電気を通さない』という当時の常識を覆す発見によるものです。それから23年後、ちょうど100年目を迎えたノーベル賞が授与されることになったのです。しかし、これだけ業績のある人が今までどうして日本では“無名”のままだったのでしょうか。 「私の場合は『出る杭は打たれる』というより放任されていた、無視されていたという感じですよ」 と白川氏は冗談交じりに受け流していますが、事態はもっと深刻です。 …… 前日本学術会議第5部長の内田盛也氏は「日本では化学全体が非主流だから、ノーベル賞くらいの業績がある白川さんが退官しても国内からは何も声がかからない。 はっきり言えば失業者ですよ」と述べています。さらに、「白川教授は一番権威のある学会日本化学会賞ももらっていません。賞の対象にもなっていないのです。日本では高分子は面白いがみんな亜流だと思っていたわけです。それが日本全体の人間評価なんです。日本全体の人間評価が狂っているんです。大学の教授は勲章が欲しくてしようがないのです。だから学会とかで会議の議長はやるけれど、ほとんど仕事はしない。仕事をしている人は無名になる。けれど海外では評価する。そういう意味では白川教授の受賞は日本に対する警告と受け止めて欲しいのです」と言います。 |
そして、「事業仕分け」の影響で「大学の研究力と学術の未来を憂う」との共同声明を発表した、東京大や京都大など国立7校と早稲田大、慶応義塾大の私立2校の総長・塾長らも、国に要求する前に、「白川氏のような悲劇を2度と出さないように」自らをしっかりと省み改善策を提示し、実行して頂きたいものです。
更には、何かと、民主党にいちゃもんをつけている自民党も、文句非難を掃く前に自分たちの悪行をすっかりと総括して(新しい施策を提案して)、互いに協力し合って、この国民の苦境を救うよう努力すべきであると存じます。
最後に、もう一度掲げさせて下さい。
“あなたのために何ができるかを国に頼るより、あなた(達)が国のために何を行うことができるか自らに問うて欲しい。” “ ask not what your country can do for you - ask what you can do for your country.” |
(補足)
先に引用させて頂いた方からの(補足)メールを転載させて頂きます。
スパコンプロジェクトから途中撤退した日立(そのとき同時にNECも撤退)のある担当者とこの件討論しています。現在スパコンの順位で5位に位している中国のもの(天津国立スーパーコンピュータセンターのNUDT製Tianhe-1(563.1テラFLOPS))は、ワッセナー協約(通常兵器及びその転用が可能な部品・技術について、特定地域に対する輸出を制限する国際協約及びその管理体制)の為、通常のサーバーしか手に入らない状態なのにその性能を維持出来ているのは台湾の高速ボード設計者の取り込みで、大量のサーバーをつなぐ通信バンド幅を広げる技術を確立したからと思われる(これはあくまでも推定)。解決策はそれしかないとのことです。 |